フライトレポート 岡田伸弘
日付:2021.4.12
エリア:足尾山
機体:ATOS VQ Race
日本では、日の長い季節が梅雨のであること、雲底高度が低いことや、目的までの風向きが一定していないことが要因で、クロスカントリー飛行で長い距離を飛ぶのが難しいです。 東日本のメッカ足尾エリア出発の場合、クロカンフライトに適した追い風の南風は福島県に入ると西寄りの風になっている日がほとんどです。 その先も海が近くなって、東寄りの海風の影響が大きくなり、距離を伸ばすのは難しいことです。 それまで順調にフォローで距離を伸ばしてきたのに強い東からの海風に当たって最後は垂直降下のように降りたこともありました。
そのためクロカンの計画を立てる上で重視しているが福島以北の風の予報です。
毎日気象情報をチェックしていると、1シーズンに1日か2日、ハングが飛べる強さで宮城県境まで南風が吹く晴天の日が有ります。
毎日気象情報は見ていて、とくにWINDYのサイトの風と天気の予報を重視しています。
風はハングで飛ぶ地表から2500m付近、さらに高層の500hpもチェックします。
これは上空の風が弱い時ほど東北は南風になりやすいのと、高層の気圧配置は数日前から予想が外れる可能性が低く、何日も前から良い日が来るのがわかるからです。
近年はこのように気象予報が当たるようになったので、静岡から茨城まで遠征しても、外すことが少なくなりました。
良い日は週末にあたるとは限りません。しかし予測ができるようになったので、よさそうな日には、休暇を取ったクロカン狙いのフライヤーが足尾に集います。
4月12日のフライトの前も、5日ほど前から良い日が来そうなことがわかっていました。 しかし南風が強すぎて危険なフライトになる可能性もありました。 SNS上で足尾の他のフライヤーと会話しているときに、「12日にクロカンに行く人」という書き込みあり、「風が強そうなので考え中」と打って送信しようとしましたが、いや、それでは回収車の定員がいっぱいになり乗り遅れる、と思い直して、すぐに「行きます」と送信し、メンバーに入れてもらいました。
メインの回収ドライバーは山本貢さんにお願いし、山形コースに行った場合は、当日熱塩で飛んでいる松本さんに協力をお願いしました。 近場に降りた時のため他に2名のフライヤーにもお願いして、回収は万全の体制ができました。
4月12日天候 晴れ
ショップは朝9時に開くので、ビジター受付をしてテイクオフに上がりました。
セットアップが終わり、GPSのGOTOは宮城コース210キロの田んぼに設定しました。
4月3日も良い日でした。その日の大会中のパラは180キロゴールタスクで18名のゴールという素晴らしい日だったのですが、私はペースが速すぎたようで100キロほどで降りてしまうとい、失敗フライトでした。
この日はそのリベンジで、宮城コースの突き当りの210キロの田んぼを目標にしたのでした。
セットアップ時から積雲が発生し、だんだんと雲量が増えてきていました。 テイクオフ後はいつもの場所で順調に上がり、燕山に移動。ここから距離の長い谷渡りになるので、なるべく高度を取りたくて、雲底近くまで上げました。 雲の吸い上げがあったので、バースバーを引き込んで北上を開始。 吸上げが強くくなってきてスピードを出しても高度があがっていきます。GPSの飛行禁止空域のアラームがなりだします。 この辺りは飛行禁止空域が高さと場所でやや複雑になっています。表示は読み取る前に消えてしまい、空域の確認はとれなかったが、起きてしまったことは気にしてもしょうがない。次のリフトをめざしそのままグライドします。
谷渡りの後は低くなってしまうので上げ直すポイントは重要です。私は茂木方面の雲がよく発達しているし、地表にあたる日差しもあるし先行するパラが数名いるので高峰を選びました。 しかしこれは失敗でした。グライドしているうちに、雲量がみるみるうちに増えてきて、日照を遮ります。 高峰にたどり着いたときは、茂木方面は日照なしで暗くなっていて、パラたちもリフトに当たらずどんどん沈下していきます。 西に目を向けるとほぼ日蔭ながらも富谷山の北にだけ、たどり着けそうな日照がありました。90度進路を変えそこを目指しグライドします。 サーマルがあることを願いながら高度400mで到着するとサーマルがあり、高度を回復できました。17㎞地点
その後も雲量が多いので日の当たってるところを狙いながらサーマルを乗り継ぎ北を目指しました。前回はペースが速すぎたので、反省して慎重に移動します。 黒羽あたりまで雲量が多いながらも1000mから1700mのレンジで順調でした。伊王野付近から雲が少なくなってきました。 この辺りから白河の峠にかけては地表の高度も高くなり、油断するとすぐに降りてしまいます。しばらくサーマルに当たらずにグライドすると佐々木さんと近くなりました。 合流して二人でサーマルを探します。海抜高度700mと低くなったところ弱いサーマルに当たりしがみつきます。南風が30キロほど吹いているので、高度が稼げなくてもまわしながら風に乗って峠を越える作戦です。73キロ地点
白河を越すと雲も減って、青空にぽつぽつと積雲が浮かんいるコンディションになりました。私のほうが少し高度が高いので佐々木さんの動きがよく見えます。センタリング中にコアがずれたなと思い修正すると、こちらが死角で見えていない佐々木さんが同じタイミングで同じような修正をするので、技量が同じだと同じ反応になるのだなと思いました。
郡山付近のサーマルで、コアが途中で切れてしまったようで、後から来た佐々木さんとは高度差がついたので先行することにしました。114キロ地点
宮城コースと山形コースの分岐点付近、私のサーマルは高く上がらなかったのと、山形コース方面に積雲が少なく見えたので、予定のとおり宮城コースを行くことにしました。
二本松付近からいよいよ雲が少なくなってきました。 雲の下にはいってもリフトはなく、このままだと福島盆地に入ったところで終了しそう。東北道は丘陵と畑が混在した地域を通っていて、それに沿って可能性が高そうなポイントを探りながら飛びます。
高度700m、ちょっと大き目な丘陵の山頂でサーマルヒット。バリオが鳴り響きハイバンクでサーマルにねじ込みます。15秒平均で3mの良いサーマル。すぐに福島市越えを確信して心の中でガッツポーズをしました。155キロ地点 2000mの雲底まであがりグライド開始。前方の福島市街地の真ん中に雲ができています。街はかなり大きいですが真ん中を突っ切ることにしました。
予定通り市街地真ん中の雲で上げ、盆地を横断して次の山につけます。ここもポイントで、コンディションの良い日でもこの辺りから先は下層に海風が入りやすくなります。 上げきれずに進み、その層に入ってしまうと終了の可能性が高いです。丁寧に上げて1900m。東には遠く海も見えます。最高の景色。177キロ地点 その後の2つのサーマルも2000mまで上がりました。
210キロの田んぼまでは安全におろせる田んぼが続いてましたが、この先は丘陵が続き、その先は仙台市の市街地になります。 いままで何人かのフライトがここで終了していて、この先が未踏の空になります。高度もあるしまだ行けそうです。207キロ地点
次のおろせそうな場所は釜房湖付近の田んぼです。ここはグーグルストリートビューで下見すみでした。
山の風下でサーマルヒット。時間的にラストサーマルのつもりで最後の最後までまわします。高度が上がると仙台の街も見えてきました。リフトがなくなったところで高度1900m。おろせそうな田んぼがいくつか見えるので湖を越して前進します。しばらくすると対地速度が遅くなったことに気が付きました。いままで南風のフォローに乗ってきたのですが、とうとう海風の領域に入ったようです。227キロ地点
高度が下がりここが終点かと思う広めの田んぼに近づくと、意外にもリフトは豊富でした。ただしあげても700mまでしか上がりません。風は南東で20から30キロと強め。次におろせそうな場所が見えますが森の向こうの田んぼです。高圧線の鉄塔も見えていて、ここからでは位置関係がわかりません。目視では届きそうですが安全を優先して足元の田んぼにおろすことにしました。後で地図で確認すると次の田んぼまで真サイドの風の中7キロ先、必要滑空比10なのでほんとに微妙でした。
降りるつもりにはなったのですが、夕方にもかかわらず、リフトが豊富で高度が落ちません。風上の仙台の街のエネルギーがすべて、風下のここから立ち上がっている感じです。風が強いのでサーマルのでる田んぼから離れる気にもならず、しばらく飛んでいました。電柱の陰が長くなったなあと思う頃、風もリフトも弱くなって無事にランディングできました。 さすがに街が近く、見ていた人が多かったのかですぐに3台の車がやってきました。しばらくギャラリーの相手をした後、貢さんに連絡し回収をお願いしました。
この日は私を含め200キロこえが5人。そのうち一人はパラの扇沢さん、さすがです。松田さんは山形コースを選んで、223キロと山形盆地に入りました。
松本さんに回収されていた松田さんとは安達太良パーキングで合流。帰りの回収車の中は、もちろん盛り上がったのですが、誰かが「燕山の吸上げででアラームなったので空域違反でダメなんじゃないの」といい、私を含め3人がそこを飛んでいたので、幻の記録になるのかとちょっとがっかりしました。エリアルール内でのフライトしか認められないので、違反があるとJHFに認められないのです。
結局、翌日トラックログをチェックすると、アラームが鳴っただけで空域違反ななく、お咎めなしが判明。日本最長記録を出すという長年の夢がかないました。