2023年6月7日
公益社団法人日本ハング・パラグライディング連盟
会長 安田 英二郎
2022年10月に九州で行われたパラグライダー上級タンデム証検定会において撮影されたビデオを教員・スクール事業委員会で確認したところ、同検定会のフライト実技試験において採点基準によると減点されるべき科目が減点されていなかった例が多数確認されました。
上級タンデム証はパッセンジャーを乗せて飛ぶタンデムフライトの安全性を高めるために導入された技能証ですから、その検定はパイロットの技能を厳格に判定するものでなければなりません。甘すぎる検定は上級タンデム証に対する信頼と存在意義をも揺るがせかねず絶対に許されません。
今回、甘すぎる不適切な検定が行われた原因としては、各検定員の採点基準の理解が不十分であったこと、悪い気象条件に基づく救済措置が過剰であったこと、ビデオによる判定会議のときにPCが利用できずビデオカメラの小さな画面しか見ることか出来なかったことなど多くの原因が考えられます。また、検定員が受験者を兼ねていたことも心理的に判定の甘さを招いた可能性があります。
また、この検定会の検定員(小林、橋田、角町、徳永、高松)の全員から事情を聞いたところ、当日のテイクオフの風がサイドの強めであったりランディング場の風向変化が激しいなど必ずしも検定に向いた気象条件ではなかったことも分かりました。
検定員による採点基準の統一的な理解を促進し、厳格で公正な検定を実施するために次の対策を実施します。
1 検定員は自分が検定員の一人となる検定の受験者となることができない。これは既に教員・スクール事業委員会により実施済です。
2 検定の合否は、検定を実施した検定員に、教員・スクール事業委員会委員または同委員会担当理事がオンラインまたは現地で参加した合否判定会議で決する。これによって全国的に採点基準と合否判定基準の厳正な運用を実施します。以前は委員が必ず合否判定会議に参加するようにしていましたが、それでは委員の負担が重すぎたため今後はオンライン参加を積極的に活用していきます。
3 難しい気象条件下で検定が行われた場合に採点が甘くなりやすく採点基準不統一の原因となるので、できるだけそういう事態を避けるため、難しい気象条件のときは検定会を開催せず、検定に適した場合にのみ検定会を行います。
4 後日の検証を可能にするため、合否判定会議の議事録には、判定の理由、気象条件による加点(救済)をした場合などはその理由を具体的に記載します。
今回の検定会で合格した方々の上級タンデム証を取り消したりする制度はありませんし、その方々のタンデムフライトが直ちに危険ということでもありません。しかし、検定会における判定に疑問が残る以上それをそのまま放置することもできません。そこで今回の検定会の合格者に対して検定科目に関する特別の講習を行います。講習会の日程・場所等は決まりしだい連絡します。
今回の検定会を実施した検定員の責任については、採点基準に従わない採点を行いその理由を充分に説明できなかったことについて検定会を主導していた小林秀彰主任検定員に主たる責任があると認め、会長からの厳重注意とします。
上級タンデム証を取得し維持し続けるためには検定項目の適切な採点を行うことが必要です。日常のフライトでどれだけ安全にフライトしていたとしてもそれは検定会では考慮されません。検定会という場で基本的なフライト技術が出来ることを示すことが必要です。そしてその技術はJHFパラグライディング教本やJHFパラグライディング教本基礎技術DVDで示されているものばかりです。フライト経験が長い方も検定のために検定項目を一つ一つ丁寧に練習してきてくださるようお願いいたします。
今回の調査を通じて九州の地でスカイスポーツを支えている方々に触れることができました。日本のハンググライダー、パラグライダーは全国各地で熱心に活動されているこういう方々によって維持されています。みなさまのご協力に感謝いたします。
以 上