雨が降っているときにフライトすると失速し易くなり、思わぬところでスピンに入ったり、ディープストールに入る可能性が危惧されていたが、実際に去る12月に事故が発生した。
これまでは降雨時でのフライトでは水滴がキャノピー内部、特にトレーリングエッジ付近に溜まり、その重さでブレークコードを戻してもブレークが引かれた状態(ピッチアップ又は迎角の増大)のままでストールしやすくなる。あるいはキャノピークロスに水滴がしみ込み重量
が増して立上げが難しくなるなどの問題が起きていたが、今回の事故はそのようなことではなく、キャノピークロスに降り注いだ雨粒がクロスにしみ込まず水滴のままクロスに付着したことにより、リーディングエッジ近辺で空気の流れが乱されて失速を誘発したものと推察される。このようなことはハンググライダーでは良く知られている(特にマイラーリーディングエッジの機体で顕著)がパラグライダーではこのような危険性を指摘する報告は上げられていなかったのが現実である。恐らくキャノピークロスのコーティングで水滴がしみ込まないものがあまり一般
的でなかったか、新品では撥水性が良くても使用するに従って撥水効果が薄れてしまうか、降雨時のフライトがあまり実施されていなかったためと思われる。
したがって安全性委員会として、降雨時のフライトは断念し、万が一フライト中に雨に遭遇したら、常に失速の危険があることを認識し、出来るだけブレークコードを使わず、速度を落とさずすみやかに安全に着陸することを心がけるよう勧告する。
同様な現象はこれから多く行われる雪山でのフライトでリーディングエッジ近辺に雪が張り付いたりしても起こることが十分予想されるので、注意が必要である。
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