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  2000年CIVL総会報告  



 正式な内容は、後日CIVLより議事録として報告されますので、この報告では小林が把握した内容と感想を報告することにします。
内容を明確にするため、議事の進行とは離れ項目毎に整理して記載します。項目は次の通りです。

1.1999年競技会報告と2000年以降のスケジュール
2.スポーティングコード
3.パラグライディング競技会
4.ハンググライディング競技会
5.GPS
6.RACE
7.その他報告

スケジュール
2月25日(金)
10:00〜13:00 会議
14:00〜19:00 ワーキンググループ
2月26日(土)
 9:00〜13:00 ワーキンググループ
14:30〜20:00 ワーキンググループ
ワーキンググループ報告
2月27日(日)
 9:00〜12:00 会議
12:00〜13:30 陪審&スチュワードセミナー
13:30〜15:00 役員会議 

 参加国は22ヶ国でした。アジアからは日本の他に中国からの出席がありました。デレゲートの他にも参加者のある国が複数ありましたので、出席者は約50人ほどでした。何故か主催国のスペインからの出席がありませんでした。

1.1999年競技会報告と2000年以降のスケジュール
【1999年パラグライディング世界選手権報告】
 
オーストリアで開催されたこの大会は、約240人のパイロットが参加したものの天候に恵まれず大会は成立しませんでした。大会運営方法については、現地の主催者が主導権を強く持ちすぎて、CIVLの意見がなかなか通らないことが多かったです。今後は、大会の運営方法に関して予めCIVLが詳細を提案し、主催者がそれに賛同してくれるよう方針を変えなければならないと思われます。また、参加総数の240人は混雑した空中で安全に飛行するには多すぎました。
【1999年ハンググライディング世界選手権報告】
 
イタリアで開催され、タスクのキャンセルは4本にとどまり、主催者の運営も良く成功しました。インターネットを使った情報の交換が上手くいったので、今後の国際大会でも見習っていったら良いと思います。ただし、大会開催中、言葉の問題がありました。競技委員長(MD)が英語を使えず、意志疎通に困難な場面がたびたびありました。
【1999年パラグライディング・アキュラシー世界選手権】
 
イギリスで開催され、大会は成功しました。同じ競技に3種類のキャノピーが使われました(パラセンディング用・パラシューティング用・パラグライディング用)。パラグライディング用のキャノピーを使ったパイロットが優勝しました。
 2002年からはパラグライディング用のキャノピーだけを使うように変更されます。
【2002年PGヨーロピアン選手権】
 
スロベニアになる予定。
【2002年HGヨーロピアン選手権】
 
スロベニアが開催地になりました。開催時期は6月から7月です。
【2002年HG女子世界選手権】
 
アメリカのシェランで開催されます。参加者の減少から女子世界選手権の開催は難しくなってきています。2000年と2002年は開催されますが、将来はPGと同様に男子と一緒の大会にする可能性も検討する予定です。
【2002年HGクラスII世界選手権】
 
アメリカのシェランで開催されます。上記HG女子世界選手権と同時開催です。
【その他】
 
今回の総会で検討する時期ではありませんが、下記の大会の立候補予告がありました。
2003年PG世界選手権 フランス(シャモニー)
2003年HG世界選手権 アメリカ
2005年WAG スロベニア

2.スポーティングコード・セクション7
 
相当いろいろな部分が変更になりました。変更は多岐に渡っており、カテゴリー1競技会運営に直接関わる事柄から、表現の統一、ゼネラルセクションとの重複をなくす、など基本的意味の変更にならない事柄まであります。詳細はCIVLホームページからダウンロードしてください。異議申し立ては4月末まで受け付けられ、5月1日から正式に運用されることになります。
会議中に議論された主な変更点は次の通りです。
1.大会の成立規定に関して
 
これまで最低4本のタスクが成立することが必要でしたが、3本に短縮されました。
2.ブリーフィングの言語に関して
 
別の言語を使ってブリーフィングが行われ、それが英語に翻訳されて説明された場合には、翻訳の違いにより誤解が発生します。そこで、今回の変更によりブリーフィングに用いる言語は英語「だけ」と明確に制限されました。
3.タスク・アドバイザリー・コミッティー
 
大会運営者に対して、タスク設定のアドバイスを行うタスクアドバイザリー・コミッティーが定義されました。地元のパイロット一人と陪審を含んで構成されます。
4.セイフティー・コミッティー
 
ローカルレギュレーションで定義することになりました。
ミートディレクターに対してアドバイスを行います。しかし、安全に関しては個々のパイロットが責任を負います。
5.大会開催人数
 100人を越える人数の大会を開催する場合は、なぜそのような大きな大会が開催されるのかを予めCIVLに報告しなければならなくなりました。
6.グライダーの改造に関して  
 Certification が与えられたグライダーは、『一切』変更を加えていけません。
変更されたグライダーは、CIVLの許可が与えられた機関により改めて検査されないといけません。
7.無線機
 
これまでの無線機1台だけという項目が削除されました。その代わりに、無線を使ってスポーツマンシップに乗っ取らない通信を行った場合には処罰されます。
8.150人ルール
 
カテゴリー1のパラグライダーは、安全上の理由から一度に飛行する人数を150に限定することになりました。(後に記載するパラグライディング競技会にて詳しく触れます。)

3.パラグライディング競技会
 このワーキンググループの検討は、延べ7時間に及びました。

世界選手権に参加する選手数を限定することに関して:
 前回の世界選手権に参加した選手数は240人にもなりました。この事実に対して次のような問題点が指摘されました。
 このような数のパイロットが参加すると空中が混雑し危険である
十分な技量を持たないパイロットが参加している(カテゴリー2の2/3ルールは十分でない)
これらの結果、今回のCIVL会議では、セクション7に大会参加人数を限定する項目を盛り込むことと、国別に参加人数を限定するシステムの採用が決定されました。最大数として150人が適当ということになりました。
 参加人数を減らすことに関しては異論を唱える人がいませんでしたが、具体的にどうやって制限するかという話になると議論が紛糾し、ワーキンググループに与えられた時間内には最終結論に至りませんでした。(この議論に対しては後述します)しかし何らかの方法で参加人数を限定しなければならず、世界ランキング上位50位までのパイロットの国別の順位を決定し、この順位に従って参加パイロット数を割り振るというものが有力となりました。(反対票は日本の1票だけ、棄権2)
 提案された方式では、パイロットの世界ランキングとしてワールド・パイロット・ランキング・スキーム(WPRS)/FAIパイロットランキングを使うことが前提とされていました。このWRPSでは、カテゴリー1競技会の結果が重視されています。不幸なことに日本が好成績を残した前回の世界選手権が不成立であったために、日本人パイロットの結果が反映されていません。また、カテゴリー1競技会として事実上存在するのが世界選手権とヨーロピアン選手権であることから、WPRSによる人数配分は、日本を含むヨーロッパ以外の国々に対しては不利な割り当て方法です。(ワーキンググループで調査したところ、2月末時点で日本の順位は12位、参加人数は男性3人女性2人に制限されてしまう)
 この問題を議論するワーキンググループにおいては、日本からWPRS方式は不公平であるとの指摘を行いました。この指摘はワーキンググループの全員に理解されたと思います。またコーヒーブレークの最中にもドイツ代表等との話を継続し、ワーキンググループに参加していない人にも問題点を指摘してきました。これらの結果、WPRS方式に代わって、なんらかの新しい国際ランキングの計算方式を定め、この計算値に基づいて国別の参加人数を定めることとなりました。新しい国際ランキングの計算方法は、時間の都合でCIVL会議中に決定することは不可能であり、4人のワーキンググループに開発の委任が行われました。本会議においては、スイス代表から、「新しい計算方法ではヨーロッパ以外の国、特に前回の世界選手権で良い結果を残した日本に決して不利にならないよう」との強いコメントが出された。
 以上をまとめるとCIVL会議終了の時点においては以下のような結論となっています。
国別出場選手枠は、国別の世界ランキングに応じて以下のように計算される:
男性
WPRS1−5位の国 5人
WPRS6−10位  4人
WPRS11−15位 3人
WPRS16位以下  2人
女性
WPRS1−10位  2人
WPRS11位以下  1人
国別の世界ランキングは、後に定める方法に従って計算する。

 また、チーム得点の計算方法もワーキンググループが後に定める方法に従う。
参加人数を決定するのは、カテゴリー1競技会開始日からさかのぼって4ヶ月前で、その時点で過去18ヶ月の合計ポイントを使う。
 この制度は2001年1月1日以降に開催されるカテゴリー1競技会に適応する。

 今回のCIVL会議では、このように日本に対して不利にならないようにとの配慮がなされました。とりあえず、昨年の世界選手権はカテゴリー2としてWPRSにポイントが加算されて、日本は9位になると思われます。しかし今後を考えると、今年カテゴリー1のヨーロピアン選手権が開催されるので、ヨーロッパ人のパイロットのポイントが上昇することが確実です。日本からの声は充分に尊重されているとは思われますが、とにかくアジアからの参加国が殆どいない現状では、投票となったときにヨーロッパの意見に太刀打ちできませんでした。

世界選手権を2本立て(シリアルとオープン)にすることに関して:
 
今回のCIVL会議では、役員会からパラグライダーの安全性に応じた2つのクラスを世界選に設けることが提案されていました。DHV2−3の安全性を満足したシリアルクラスと、ラインの負荷テストとメーカからの安全性証明書があればプロトタイプグライダーでも参加できるオープンクラスの2つのクラスです。(PWCでは既に2つのクラスで競技を行っている)この提案に関して長い時間を使って活発な意見交換が行われました。
 議論のあと、オープンクラスだけで開催することに採決で決まりました。

4.ハンググライディング競技会
 
昨年の総会以来、継続審議となっていたハンググライダーの構造上の安全基準について決まりました。これは、即有効になる基準で、カテゴリー1とカテゴリー2の両方に適応されます。
ピッチ安定性に関する基準は継続審議となり、ワーキンググループで検討されます。

5.GPS
 
昨年のCIVL会議において、これまでの写真撮影による飛行証明に対して、GPSを使ったフライト証明が紹介されました。今年は、GPSを使った飛行証明が正式にセクション7に記述されるようになりました。但し、GPSは様々な問題も同時に抱えています。このためセクション7におけるGPSの扱いは、オプションとなっていて、写真撮影による方法もそのまま残っています。GPSが持っている問題を全て解決できれば、大会は極めてシンプルかつ安全になることは誰の目にも明らかです。以下に今回のCIVL会議の様々な局面においてでてきたGPSの話題を簡単にまとめて紹介します。

1.飛行証明として使うことに関して
 
セクション7において、GPSを飛行証明として使うことがオプションではあるが認められた。但し、GPSの記録を取り込むプログラムはCIVLの承認を得たものでなければならない。(現在このソフトウェアは全部で3種類存在している。)
2.天候急変時におけるGPSの使用
 
大会主催者はGPS内部に記録された時間情報(タイムスタンプ)と、位置情報を把握することができる。そこで、GPSを全面的に採用した大会では、天候が急激に悪化した場合などに、オーガナイザーがタスクを中断し、その時点におけるGPSの位置情報を使って得点集計するアイデアが提案された。大会が中断された場合には、ランディング地点に関わらず、タスク中断の時点における最大到達点を計測するものである。
 これまでの大会でパイロンとパイロンの間にランディングした場合は、ランディング地点に応じて得点が計算されていたので、ランディングする場所はできるだけ次のパイロンのそばを選択した方が有利になった。これに対して、今回提案された方法では、タスクが中断された瞬間の位置情報が既にGPSに記録されているので、パイロットは安全な場所を探して、どこにでもランディングすることができる。例えばタスクが中断された時点で手前のパイロンの方向に引き返してランディングすることも可能になる。
 但し、GPSが正しく操作されなくて、バックアップとして撮影した写真を使って飛行証明にした場合には、これらの方法が採れなくなってしまう。
3.セクターの形状
 
昨年のCIVLで提案されていたように、FAIセクターに半径100mの円を付け足したものをGPS用のセクターとする案が提案された。

世界記録の公認にGPSを使うアイディアに関して
 
ソフトウェアが整っておらず、すぐに実施することはできないが、検討を続けていく方針です。GPSベースのフライトレコーダを使うことがハンググライダーでは承認されました。値段が高く性能にも不安があるようです。検討を続けていくことになりました。

6.RACE
 昨年のCIVL会議においてRACEと呼ばれる大会の得点計算プログラムが提案されました。これまでは得点計算プログラムを各国が独自に作成していましたが、これをRACEという一つのプログラムに統一して、どこの国で大会を開催した場合においても、RACEという共通の土俵で得点計算することを目標としています。RACEプログラムは得点の計算式として、最近普及しつつあるGAP方式を標準搭載しています。従って、RACEプログラムは、これまで使われてきたGAPの計算プログラムも置き換えていくと予想されます。また各国の事情に合わせてGAP以外の計算式を組み込むこともできるように最初から設計されているのが特徴です。これまでRace4.0と呼ばれていたシステムはRace 2000と名称を変え、CIVLホームページからダウンロードできるようになりました。
 これまでGAPおよびRACEに否定的であった国々においても、本当のところが理解されるにつれて肯定的な意見に変わってきているような印象を受けました。また相変わらず否定的な意見を持つ代表もいたし、話を聞いてみると計算方法に関して根本的なところを誤解しています。これからRACEプログラムが本格的に供給されるようになると、誤解が解けて使われる国が確実に増えていくと予想されます。

7.その他報告
クラスデフィニション
 
クラス2の認定方法が少し変更になります。2本のフライトのビデオテープでフットランチと足でのランディングが出来ることを示す連続のビデオを製造者が提出することになりました。今後発表される新しい機体は、ここに定めたクラス2の認定方法に従って検討されます。(3月1日に早速新しい機体が発表される予定)SWIFTやエクスタシーはクラス2に属することが確認されました。

DHVからの報告
 昨年のCIVLで報告したように、ヨーロッパではレッグストラップ(足ベルト)の閉め忘れによる死亡事故が多発していました。昨年DHVからセイフティービデオを供給した結果、この1年間でヨーロッパの主要国からの閉め忘れ事故の報告は無くなったそうです。今年は、フライト技術の向上を狙って、アクティブフライトというビデオを作りました。予算の関係で英語バージョンは作っていなく、ドイツ語のみです。クラウスにお願いしてJHF用に一本入手したので、後で日本規格のビデオに変換するつもりです。

8.CIVL活動
【財政状況】
 
昨年は支出が収入を越え赤字でした。これまでの貯蓄があるおかげで破産しないで済んでいます。(支出38409スイスフラン、収入31790スイスフラン)
【カテゴリー1申請料の値上げ】
 
上記の財政難を解決するため、カテゴリー1申請料を1000スイスフランから2000スイスフランに値上げすることが提案され、承認されました。カテゴリー2申請料は変更なく、パイロット一人分のエントリー費です。
【インターネットの活用】
 
数々の文書は郵便による配布を全く行わず、メールが唯一の情報交換手段となります。また、ホームページを頻繁に更新することで、最新の情報を得られるようにします。
【メディア】
 
ワールドエアゲームズ(WAG)、2000年PGヨーロピアン選手権などがTV局に取材されることが決まっています。今後もメディアに扱ってもらえるよう努力していきます。