第3回
JHF補助動力付パラグライディング日本選手権 
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 
期 間/平成11年10月23日〜24日
主 催/社団法人日本ハンググライディング連盟主催
公 認/財団法人日本航空協会公認
会 場/千葉県富津市・県立富津海浜公園エリア
 
●TV中継もありの都市圏開催
 通称「モーターパラの日選」と言えば「JHF補助動力付パラグライディング日本
選手権」のことで、正式名称はやたらに長い。3回目を迎える今大会は、念願の大都
市圏での開催となった。川崎から東京湾アクアラインを抜けてさらに20分、首都圏
の穴場的レジャースポット県立富津海浜公園エリアだ。房総半島が、鶴のくちばしの
ように東京湾に突き出した細長い岬は、富津と書いて「ふっつ」と読む。対岸の三浦
半島観音崎は、南南西へ直線7kmとおそろしく近い。
 10月24日の日曜日、TBSの昼の天気予報を見た人はいるだろうか? あの背
景を舞ったモーターパラの編隊、実はあれが今大会の生中継だ。本来は競技そのもの
を放送する予定が、どっこい2日目の午前中は強風によるウエィティングの真っ最中。
急遽エントリー選手から有志を募り、ダイヤモンド・フライトを決行したのがあの映
像だ。ダイヤモンドとは、4機の機体がスクエアポジションを敷き、平行移動・サブ
ロクなどを行うショーフライトだが、残念ながら演技に見とれてロクな写真を撮らな
かった。
●空天使的地元千葉県大勝図
 競技内容は毎度おなじみの複合タスクで詳細は別表をご覧いただきたい。全てのタ
スクにエンジンカットが含まれているのも例年通り。しかし今年は海浜エリアという
ことで、かなり低い高度でソアリングが行われた。セットタイムディレーション競技
のエンジンカット高度も、通常は800m以上だが、今回は200m以下となった。
強烈な浜風を受けて極端な偏流飛行を余儀なくされ、体重の軽い女性陣には厳しい競
技会となった。内陸風をホームエリアとしている選手は、少し面食らったかも知れな
いが、海風は風速の割に風質はソフトで、バンピーな流れも無く、フライトの安全性
は極めて高い。
 そんな条件の中で優勝の栄冠を手中にしたのは、本誌Q&Aコーナーでおなじみの
「萩さん」こと千葉県の萩原光だった。今回は埼玉・東京・神奈川の有力選手が日程
の都合でエントリーできなかったこともあるが、賞者の顔ぶれを見ても分かるように、
千葉県勢が地の利を活かして圧勝した。上位入賞の常連、埼玉県の村田福司が初日の
つまずきを取り返すことなく、圏外へ去ってしまったのが悔やまれる。また前回3位
の栃木県の実力者塚部省一も7位と奮わず入賞を逃した。塚部は第1回大会でも7位
で、6位入賞までメダルとカップが用意されているのに、まったく不運としか言いよ
うがない。
●萩原逃げ切る
 2日目に入って、勝敗の興味は上位3名の逆転劇に絞られた。トップ萩原を追う2
位斉藤・3位村上の二人は、午前中の長いウエィティングで、残されたチャンスはこ
の一度しかないと感じていた。
 まず萩原がテイクオフ、すぐその後を村上が追った。周回スピードでは村上が萩原
を5秒おさえてトップゴールを果たした。が、ターゲットは両者とも見事に第2中心
円をゲットしたため、二人の順位は変わらなかった。
 2位斉藤は最終日の最後にテイクオフした。周回スピードでは斉藤も萩原を上回っ
た。そして慎重に風を選び、ランディング上空を旋回すること3分、満を持して機体
はエンジンをカットした。富津の浜に静寂が戻り、晩秋の斜陽が浜辺をオレンジ色に
染めた。次の瞬間、地上は狂喜と落胆の歓声に包まれた。なんと痛恨のショート、斉
藤機はターゲットを外してしまったのだ。集計結果を待つまでもなく、この時点で萩
原の2年連続優勝が確定した。
●ふたつの日本選手権
 JHF補助動力付パラグライディング日本選手権という名称から「付」の文字を除
いてしまうと、それはウィンチトーイングを意味してしまう。補助動力証とはそもそ
もそういう性格を持った日本独自の用語だと聞かされている。MPGはその手段の一
つでしかない。補助動力の性格からして、高度を獲得した後エンジンをカットして、
グライディングを開始するのが本来の運用方法だが、それだけで競技をするのでは、
既にJHFには、ハンググライディング・パラグライディングの日本選手権が存在し
意味を持たない。
 現在MPGにはふたつの日本選手権が存在する。JHFが主催するクラスO(オー)
と、JMLが主催するクラスRの競技会だ。それぞれの実行部隊はJHFが補助動力
委員会、JMLがフットランチドマイクロライト部会である。両選手権を一本化しよ
うという意見もあるが、一方でこのままふたつ存在している方がいいと言う意見もあ
る。沢山有ったほうが沢山出られるという単純な考えと、関東圏以外で開催するには、
準備の手間がさほどかからないクラスOを現在の形で残せという意見だ。MPG・P
PGの普及・振興、フライトモラルの向上のためには確かに一理ある。
 私は当初一本化論の構想者だったが、萩さんの「沢山有った方がいいよ星野さん」
という提案を聞いて考えが揺らいだ。とりあえず現実にふたつの選手権が存在してい
るなら、お互いの競技会を認め相互に後援者となるべきだと考えた。ふたつの技能証、
ふたつの登録証など、話し合いを始めるならその後だ。簡単な経緯ではなかったが、
どうにか今回、JHFの大会はFLM後援となり、一ヶ月後に開催されるFLMの大
会をJHFが後援することになった。
●2000年の開催は富山県
 次回の選手権は富山に内定している。今回の千葉大会へ陸路9時間かけて、4名の
選手が駆けつけてくれた。2000年は富山国体の年だという。国体協力はとにかく
エネルギーを消費する。富山県連の活躍を期待したい。JHFは多方面に亘って協力
していく所存だ。 
●タスク1:サーキットタイム&ターゲット10月23日(土)
 テイクオフすると同時にタイム計測を開始し複数パイロン間を2周してエアーゴー
ルする周回スピード競技と、空中設定ラインでエンジンをカットしてランディング精
度を競う。
●タスク2:サーキットタイム&ダーツ&L/D
 サーキットは逆周りでタスク1と同じ。エンジンカット後はランディング上のター
ゲットへ今度はダーツを投げ込み、そのまま滑空してL/Dを延ばす。
●タスク3:移動スピード&ディレーションセットタイム
 3つのグループに分かれ、それぞれ空中一斉スタート後、パイロンを周回して空中
ゴールするスピードレースの前半戦。ゴールの直前でエンジンをカットして、そのま
まセットタイム3分のソアリングに入る。今回はコラップス禁止で、しかも3分以上
は得点0としたため、ほとんどの選手が低めの高度からソアリングを開始した。
●タスク4:サーキットタイム&ターゲット10月24日(日)
 内容はタスク1とまったく同じで周回距離を若干短く設定した。
 
     (社)日本ハンググライディング連盟補助動力委員会担当理事 星野 納
.