機 体 |
スカイウォーク式 テキーラ型 XSサイズ 事故機 |
テスト日時 |
2007年8月16日 11時 |
場 所 |
長野県木崎湖 |
パイロット |
事故調査委員会専門委員 西ヶ谷一志 45歳 72kg 飛行重量90kg
同伴飛行による上空からの確認者 文字英彰 |
備考 |
高々度フライトと失速特性等のテストフライトを行った。
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1 外見所見 |
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270時間の総飛行時間ということで、生地の劣化は相当なものである。推測するに、ラインの劣化は生地同様だと思われる。生地はよれよれでコーティングによるパリパリ感は無い。
実際に問題の白色クロス部分に息を吹きかけると、通気性のある生地(綿のTシャツ等)と同等の通気性がある事を確認した。翼の中央部分が最も劣化している。また、問題の生地以外の部分は、息を吹きかける方法では通気性を確認できることは無かった。また、同じ白色生地の他の部分と問題の部分を比較すると、明らかに変色の度合い(ねずみ色に変色)が強く、劣化が激しいことがわかる。
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2 テストフライト |
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立ち上げ
全体の劣化の影響か、新品のような強い抵抗感は無いが、問題なく起ち上がる。
直線フライト
全体の劣化の影響と、体重オーバーでのフライトなので、沈下率は高く、滑空比も悪い。
50%片翼つぶし
潰す運動に対しての抵抗感は、DHV1-2クラスと同等で、回復傾向も変わらない。
左右共に特性に違いは無かった。
ハーフストールからの回復(Bストールからのゆっくり回復)
ゆっくり戻すと、ストール状態からゆっくり通常滑空に戻る。ただし、DHV1-2クラス範囲内。
フルストール
重量オーバーなので、比較的軽いブレークコードの引きで簡単にストールに入る。回復動作は、オーソドックスな方法で可能でキレイにダイブに入り、滑空性を抑制するような挙動は無かった。
ランディング
重量オーバーなので、心配だったが問題なくフレアーも掛かり、ストールへの粘りもありリーディングエッジが弱い印象は無い。
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3 考察 |
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パラグライダーの全体の劣化がひどいので、該当パラグライダーのグライド性能は明らかに劣化していた。また劣化に伴い、安全性能の劣化も見受けられる。DHV1-2クラスのテスト項目はDHV2もしくは2-3クラスへ悪化している項目があるのでは無いかと懸念される。この点については、DHVやCENでのより具体的な比較テストが望まれる。
本テストでは、重量オーバーでのテストであるため、飛行重量内での挙動が全く同じであるとは言えないが、事故と該当部分の空気漏れの相関性を確認することはできなかった。
つまり言い換えると、該当部分がもし他の生地と同様の劣化程度であったとしても、事故が起きていた可能性は否定できない。
本質的に該当パラグライダーの生地の劣化は相当なもので、パイロットのセルフチェックで「フライト不可」と判断すべきである。ただし、劣化の激しい白色クロスの部位は、明らかに他の生地とは異なった高い空気透過性を有する。手で触れた感触では、生地のコーティングだけでなく、生地そのものの強度も他の部位と較べて悪いと思われる。メーカーから同様の生地を使用していると指定されている、同色の生地と比較しても明らかに劣化具合は異なる。なぜ、該当部分だけ生地が劣化したかどうかの調査が必要である。
以上を踏まえて、
・セルフチェック、プレフライトチェック、定期点検等の徹底啓蒙
・劣化の原因究明と公開
・輸入業者およびメーカーへの再発防止策の情報提供依頼
・諸外国との情報の共有
・消費生活用製品安全法への報告の徹底
が必要である。
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