項 目 |
パラグライダー離陸時の事故 |
日 付 |
2004年5月8日 |
場 所 |
兵庫県川辺郡猪名川町柏原字石原田4-1
大野山フライパークエリア |
機 体 |
ジングライダー式 ノマド型 Sサイズ
(投影面積22.45 m2) |
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1.事故調査の経過 |
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1.1事故の概要 |
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ジングライダー式 ノマド型 SサイズDHV2-3(パラグライダー、単座)は、2004年
5月8日 13時00分頃、レジャー飛行のため兵庫県川辺郡猪名川町の大野山フライパークエリアのテイクオフに於いて、クロスハンドライズアップした後、正面
に向き直りスタートした際に風にあおられるよう右に流されながら約2m浮き上がり右回りに2回転振り回されるように転倒し頭部及び頸部を損傷し病院に搬送された。
事故発生から2時間15分後に搬送された病院で死亡した。
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1.2事故調査の概要 |
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事情聴取:
エリア関係者及び目撃者に事故当時の様子を聴収した。 気象状況収集その他関係情報収集などをおこなった。
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事故機の検証:
2004年6月11日 |
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検証事項:
目撃証言を基にテイクオフ事故現場の検証を行った。
機体、ハーネスの検証:2004年7月6日 |
2.認定した事実 |
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2.1飛行の経過 |
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目撃証言から、事故の経過は次のように推定される。
事故機は、2004年5月8日13時00分頃、レジャー飛行の目的で兵庫県川辺郡猪名川町の大野山フライパークエリアのテイクオフ場(標高670m)を南西の正対風約3〜4m/sの中を離陸しようとした。
パラグライダーをクロスハンドライズアップし、正面に向きを変えた時点でスタートするかに思えたが、グライダーに真横に引っ張られた状態で正面
を向いたまま右90度方向に7m程早足で歩いている状態になる。その瞬間、身体が2m程持ち上げられ体勢が反転し再度後ろ向きの状態となる。その直後身体が右回りに2回転側転し振り回され投げ飛ばされる状態で転倒して止まる。
即刻、事故者を救助するもすでに意識不明、呼吸停止状態であった。心肺蘇生を施し事故発生30分後に救急隊が到着し病院に搬送したが事故発生から2時間15分後に病院で死亡が確認された。
死亡原因:1回転目の側転で身体が振り回された際に地表面に側頭部を強打した。更に2回転目も同様に頭部を強打した。そのため頸椎損傷及び脳挫傷による脳内出血による死亡と診断された。
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2.2機体の損壊に関する情報 |
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キャノピー部分 :
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右翼エアーインテイク端部に10cmの破れ。
(当該事故により破断したのかは不明) |
ライン各部:
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損傷は無い。 |
ライザー部:
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損傷は無い。 |
計器類:
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不明。 |
ヘルメット:
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事故時に付いたと思われる擦過傷程度の損傷が認められた。 |
ハーネス:
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アエロタクトエキスパートハーネス(M)損傷は無い。
カラビナ間寸法41cm |
機体、ハーネスの検証:
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2004年7月6日機体を遺族から借用し検証を行う。 事故要因となるようなライズアップ特性等の問題は無かった。
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2.3機体に関する情報 |
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型式 ジングライダー式 ノマド型
(S サイズ投影面積 22.45m2) GH-60214 |
製造年月日:
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不明 |
耐空証明等:
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DHV2-3取得 |
総飛行時間:
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不明 |
総発航回数:
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不明 |
飛行重量:
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最小75kg〜最大95kg |
2.4パイロットに関する情報 |
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性別:男性 年齢:44歳 裸体重:65kg |
技能:
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XCパイロット技能証 2002年3月22日交付
関西パラグライダースクール所属 |
2.5気象に関する情報 |
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2.5.1事故当時の風向、風速 |
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テイクオフ:南西の風 3〜4m/s
飛行経路:南の風 2〜3m/s
ランディング:南の風 0〜2m/s
当日は薄雲がかかり比較的安定した風であった。事故者は午前中に1本の安定したフライトを終え、ひき続き2本目のフラトのためテイクオフに上がった。この時も3〜4m/s程の安定した風が吹いていた。いずれの目撃証言者からも急激な風向、風速の変化、突風等による飛行の障害となる状況は証言されていない。
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3.考えられる原因 |
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事故調査をして得られた情報から、今回の事故は、パラグライダーをクロスハンドライズアップし振り向いた際にグライダーが若干右に傾き流されたと思われる。事故者はこれを修正する為に右方向に移動しながら修正しようとしていたのではないか、その後、再度振り向いてテイクオフを一旦中止し、やり直そうと判断したのではないかと推測される。その振り向こうとした瞬間に身体が浮遊したと言う事は振り向く動作と共にグライダーを後方に落とす為にフルブレーク操作をしようとしていたのではないか、この一連の操作の過程に於いて最大揚力が発生する状態になってしまい浮遊するに至ったと思われる。その後、フルブレーク操作及び風の状態により頭上の翼が失速し左翼が潰れてテンションが無くなる状態に、右翼が風を受け流されながら揚力を発生し上空に跳ね上げるような状態になった為に事故者を回転させるような力が働いたのではないかと推測される。あるいは振り向く際に逆方向に回りライザーが捩れていたため浮遊した際に捩れが元に戻ろうとして回転したか、捩れによって操縦者のフックポイントが身体の中央部1点になり回転しやすい状況になってしまったことも考えられる。いずれにしても目撃情報から何故回転したのかは一瞬の出来事故に確証は得られなかった。
また、事故者を知る複数のパイロット及び大野山フライパークエリア管理者からの証言では事故者はライズアップ、フライト技術が不充分であった。技能レベルはJHFノービスパイロット相当と判断される程度の技能であった。そのためライズアップ練習を再三にわたり要請したものの聞き入れて貰えなかった。使用グライダーのジングライダー式ノマド型(DHV2-3)も難易度が高く事故者の技能では無理があった。
との指摘がある。 |