項 目 |
ハンググライダー飛行中の空中分解墜落事故 |
日 付 |
2004年4月11日 |
場 所 |
大分県玖珠町山田 伐株山 |
機 体 |
イカロ式ラミナール型 L13MRX サイズ(投影13.50m2) |
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1.事故調査の経過 |
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1.1事故の概要 |
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イカロ式 ラミナール型 L13MRXサイズ(ハンググライダー単座)は、2004年4月11日午後16時55分頃、デモンストレーションフライトのため大分県玖珠町山田の伐株山西側テイクオフから離陸し、同周辺空域に於いて100〜150mの高度獲得をした。この間の飛行時間は10分程度であった。その後テイクオフ後方上空より西方向(テイクオフ前方)に加速しながら急降下しテイクオフ前方約100mテイクオフとほぼ同一高度に達した空域に於いて機体が破壊しセールとフレームが分離した。操縦者はフレームと一緒に落下した。対地高度は100m程度あったと思われる。
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1.2事故調査の概要 |
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事情聴取:
エリア関係者及び目撃者に事故当時の様子を聴収した。 気象状況収集その他関係情報収集などをおこなった。
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事故機の検証:
2004年4月27日大分県玖珠町玖珠警察署刑事課の協力により同警察署に於いて検証を行った。
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検証事項:
フレーム及びセールの破壊状態、破断箇所の調査。
テイクオフ及び落下地点の調査。未回収部品の収拾。 |
2.認定した事実 |
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2.1飛行の経過 |
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事故機の飛行経路の詳細は、搭乗していたパイロットが死亡しているため不明である。
しかし、事故機の飛行経路は、テイクオフにいたエリア管理者、及び、クラブメンバーのパイロットの目撃証言から、事故機の飛行経過は次のように推定される。
事故機は、2004年4月11日16時55分頃、デモンストレーションフライトの目的で大分県玖珠町山田伐株山のテイクオフ場(標高685m)を西の風の正対風約5m/sの中を離陸した。離陸する際に事故者はループ(宙返り)をする旨を言い残している。
離陸後、同機はテイクオフ前の上空域を高度獲得し約10分の飛行後、テイクオフ後方上空高度80〜100mに於いてVG(セールを張る装置)を3回ほど操作している様子が目撃されている。その後テイクオフの正面
、西方向に一直線に加速、降下しテイクオフ上空を通過した。この時同機からはハンググライダーからとは思えぬ
程の轟音が発せられ スピードは100〜130km/hに達していたのではと推定される。
テイクオフ上空を通過し正面、西方向に飛行している最中に2回のノーズダウン(ピッチダウン)が目撃されている。テイクオフと同一高度に達した時に3回目のノーズダウンが認められた。(実際には徐々にノーズダウンしていって急激にタンブルに入った。)この時、操縦していたパイロットが前方に投げ出されたように目撃された。同時に両翼のスパーが破壊、セール中央部がノーズ部からめくりあがり、セールとフレームが空中分解し約100m下の植林の傾斜地に落下した。
警察、消防署、クラブ員により救助に向かったが現場到着時にはすでに死亡していた。全身骨折による外傷性ショック死と診断された。
事故者は緊急パラシュートを装備していたが使用操作をしたかどうかは不明。
尚、回収された機体に欠落していたキールポケット、バテン及びリミッターバテン等は墜落地点の現場検証時に近辺にて発見したがノーズコーン、左カーブドチップは発見出来なかった。
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2.2機体の損壊に関する情報 |
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フレーム部:
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左スパー:ノーズ先端部より2300mmの所で破断。
右スパー:ノーズ先端部より60mm、2140mmの所で破断。
キール:ノーズ先端部より1310mm、2100mmの所で破断。
更にキール後部が2箇所破断している。
左クロスバー(カーボン製)先端のスパー接続部が破壊。
左右アップライトがほぼ中間部で破断。 |
セール上面部:
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左翼トレーリィングエッヂ、キールポケットサイドに穴開き。
右翼トレーリィングエッヂ、キールポケット側から2番3番バテンの間に破れ。その他。
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ワイヤー部 :
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左フライングワイヤー翼端側で破断。
右フライングワイヤー翼端側で破断。
その他多数が破断。 |
計器類:
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GPS一体型バリオメーター表示部破損により故障。
フライトデータの取り出しを機器メーカーに依頼するも回路基盤の破壊により修復不可であった。 |
ヘルメット:
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不明 |
ハーネス:
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左右にかぎ裂き状の損傷。 |
2.3機体に関する情報 |
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型式 イカロ 式 ラミナール型 L13MRXサイズ
7574 |
製造年月日:
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2003年3月(入荷) |
耐空証明等:
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DHV01−0377−02取得 |
総飛行時間:
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約50時間 |
総発航回数:
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約50回 |
飛行重量:
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最小100kg〜最大135kg |
2.4パイロットに関する情報 |
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性別:男性 年齢:32歳 裸体重:60〜65kg |
技能:
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クロスカントリーパイロット技能証
飛行経歴は本人が死亡したため不明であるが年間飛行時間は80〜100時間を飛行経験していた。
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2.5気象に関する情報 |
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2.5.1事故当時の風向、風速 |
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テイクオフ:西の風5m/s
飛行経路:西の風5m/s
ランディング:西の風2〜3m/s
事故目撃者の証言より現場付近の風の状況は次のとおりであった。事故発生時間は夕刻であり安定した西の風5m/sが吹いておりハンググライダーが飛行するには問題ない状態であった。いずれの目撃証言者からも急激な風向、風速の変化、突風等による飛行の障害となる状況は証言されていない。気象要因は無い。
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3.考えられる原因 |
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事故調査をして得られた情報、及び目撃証言から事故機は運用限界(超過禁止速度、曲技飛行の禁止)を超える操作、及び、ウオッシュリミッターのねじ山が1ないし2山しか見えていないことから、リミッターを下げすぎている(ピッチ安定が減少、バープレッシャーが無くなる)ことによるオーバースピードが事故の要因である。
事故機はループ(宙返り)をする為に加速しスピードが推定100〜130km/hに達していたと思われる。このためノーズダウン(ピッチダウン)の傾向が急速に高まり3回目のノーズダウンの時にタンブル(前転)に入ったと推測される。(これは機体自身の抵抗に比較してパイロットの抵抗が大きくなるため、スピードが上がるにつれてパイロットの抵抗増加分が機体の抵抗を上回り、そのため機体がタンブル(前方宙返り)する可能性が高くなると言われている。)この時、両翼のスパーが破壊(マイナス3G以上の荷重が掛かった)、また操縦していたパイロットが前方に投げ出されセール下面
に激突しファスナーを破壊(開放)したか、あるいはセールの破断状態から折損した右スパーがセールを突き破り破断の起点となったか、あるいはこれらの推測されることが同時に相乗発生した可能性が高い。 このため翼内に一気に空気が流入しセールの下面
の縫製を破壊しノーズ部からめくりあがるようになり、フレームがセールからとび出す空中分解に至ったと推測される。
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