項 目 |
パラグライダー飛行中の墜落事故 |
日 付 |
2004年5月1日 11時10分頃 |
場 所 |
山梨県河口湖町スカイリゾートエリア |
機 体 |
イーデル式 コントロール型 Mサイズ(投影24.8u) |
|
|
1.事故調査の経過 |
|
1.1事故の概要 |
|
|
イーデル 式 コントロール型 Mサイズ(パラグライダー、単座)は、2004年5月 1日10時40分頃、訓練飛行のため山梨県河口湖スカイリゾートエリアから離陸し、高度を獲得し背後(北西側)にある尾根上まで到達した。その後、尾根を越えてしまい北西側に位置する芦川村方向から尾根を越えてランディング場に戻れない状況に陥った。
インストラクターは事故者が尾根の裏側に入ってしまったため直接本人と無線交信が出来ないため、テイクオフ北側の尾根上空をフライトしている講習生を中継し、尾根裏の乱気流を避けるため、出来るだけ尾根から離れ北側対岸の釈迦が岳の南斜面の安全な場所に下りるように指示をする。11時10分頃、事故者は離陸地点から北西に約2Kmの山梨県芦川村上芦川の新道峠付近の沢(谷あいの岩場、標高1255m)に不時着した。
先般無線中継をした講習生が無線で呼びかけるが応答が無かった為、インストラクターが事故者の携帯電話に電話をかけるが留守電状態であった。
すぐに回収を兼ね不時着場所の特定のため捜索を開始。15時40分ごろ事故者と無線が繋がる。事故者本人の意識はしっかりしていたが、不時着場所の特定が出来ず。また、動くことが出来ないとのことであった。不時着場所の特定が出来ていないうちに日が暮れ始め、最悪の事態を想定し、18時19分に警察ならびに消防に通報した。
18時45分事故者を発見。19時35分救急隊が到着し、救急車で病院に搬送されたが22時16分、骨盤骨折による内出血により死亡した。
|
1.2事故調査の概要 |
|
|
事情聴取:
エリア関係者に事故当時の様子を聴収した。
気象状況収集その他関係情報収集などをおこなった。
|
|
事故機の検証:
2004年9月3日(金) |
|
検証事項:
不時着場所および飛行コースの確認。 |
2.認定した事実 |
|
2.1飛行の経過 |
|
|
事故機の飛行経路の詳細は、搭乗していたパイロットが死亡しているため不明である。
目撃証言から、事故機の飛行経過は次のように推定される。
イーデル式コントロール型 Mサイズ(パラグライダー、単座)は、2004年5月1日10時40分頃、レジャー飛行のため山梨県河口湖スカイリゾートエリアから当日の3番目に離陸し、順調に高度を獲得し背後の尾根(テイクオフの北西側約1km、標高1600m)にある尾根上空まで到達した。
尾根上空を飛行しているうちに(写真-3,4,5)尾根を越えてしまい北西側に位置する芦川村方向(飛行禁止空域)に流されてしまった。その後、高度を失い尾根を越えてランディング場に戻れない状況に陥った。11時10分頃、事故者は離陸地点から北西に約2Kmの山梨県芦川村上芦川の新道峠付近の沢(谷あいの岩場、標高1255m)に不時着した。(北緯35度32分52.9 東経138度43分17.1)
上空で飛行していたパイロットの証言では不時着する少し前まで事故者が高度処理をしていることが目撃されている。しかし、不時着したところは目撃されておらず、不時着に際して失速し落下したか、あるいは激突したかは不明である。不時着した場所は小さな沢(水無し)で直径50cmほどの岩がごろごろしている場所であった。不時着した場所が尾根の裏側のために無線連絡がとれず不時着場所の特定と捜索、救助活動に時間を要する事になる。
15時40分頃に事故者との無線連絡が取れるが場所の特定は出来ず、最終的に18時45分事故者を発見。19時35分救急隊が到着し、救急車で山梨県立中央病院に搬送されたが22時16分、骨盤骨折による内出血により死亡した。
|
2.2機体の損壊に関する情報 |
|
キャノピー部分 :
|
損傷は無い。 |
ライン各部:
|
損傷は無い。 |
ライザー部:
|
損傷は無い。 |
ハーネス:
|
SUP‘AIR エヴォルーション損傷は無い。 |
計器類: |
フライテック4005 |
ヘルメット:
|
損傷は無い。 |
その他:
|
|
2.3機体に関する情報 |
|
|
型式 イーデル 式 コントロール型 M サイズ
(投影24.8u)CTM0210073 |
製造年月日:
|
2002年10月 |
耐空証明等:
|
DHV1取得 |
総飛行時間:
|
不明 |
総発航回数:
|
不明 |
飛行重量:
|
最小75kg〜最大100kg |
そ の 他:
|
|
2.4パイロットに関する情報 |
|
|
性別:男性 年齢:62歳 |
技能:
|
OXYクラブパラグライダースクール所属
|
2.5気象に関する情報 |
|
2.5.1事故当時の風向、風速 |
|
|
テイクオフ:南東の風2〜3m/s山並みに正対する正面からの風。天候曇り
飛行経路:南東の風2〜3m/s
ランディング:南東の風2〜3m/s
当日は多くの講習生もフライトしていた。気象条件としては特筆すべきことは無い。
|
3.今後への教訓 |
|
|
*飛行中は常に気象条件を観察し、周りをよく見て、風により流されることを考慮して互いに注意してフライトする。
*特に尾根の風下側に流されると、風の収束により尾根上空かなり高くないと尾根の風上側には戻れなくなる危険性が大きい。
場外着陸を余儀なくされた場合、密集した木の中に不時着するという選択肢も含め、より安全であろう場所を選択すること。
*パイロットが場外着陸した場合は速やかに、無線、携帯で連絡を取る。この際、たいていの場合ランディングと場外着陸場とは直接交信できないので空中に滞空しているパイロットが中継の役目をすることが重要である。
*今回の事故では、パイロットが不時着してから救出される迄に、結果的に8時間半を要している。パイロットが場外着陸した場合は最悪の状況も想定して、捜索体制をとる。もう少し早く救出していたらという反省の上に、早期救出をはかれば生存確率は高まる。具体的に複数のメンバーで、多くのグループで互いに連絡を取りあいながら捜索する。不明者と連絡が取れず発見に時間がかかるようなら、消防救急隊へ通報し依頼すること。
*重大な事故発生時や行方不明等での捜索体制時には、家族等緊急連絡先に連絡をとること。
*捜索活動では無線や携帯電話を携帯し、情報の不達・行き違いのトラブルを避けるようにする。また事故の状況など通信内容は双方向で確認し、正確に伝達するように務める。
*常日頃、あらゆる状況に対処できるように危機管理マニュアルを作成しておくこと。
|