さのう高原事故調査報告書
2002年11月20日公表
項  目 パラグライダー飛行中の墜落事故
日  付 2002年9月15日
場  所 兵庫県朝来郡朝来町さのう高原
1.事故の概要

 ウインドテック式セラーク型Mサイズ(パラグライダー、単座)は、2002年9月15日(日曜日)午後13時15分頃、レジャー飛行のため兵庫県朝来郡朝来町さのう高原から離陸し、ランディング西側上空で両翼端を折りしばらくその状態でフライトののち両翼を戻した直後(ほぼ同時)左回りのゆっくりとしたフラットスピンに入り約3回転した。この時点でパイロットはツイストしパイロットは後ろ向きになる。いったんスピンが停止したあとすぐに逆回転のフラットスピンで約3回転。その後スピンは停止し両翼が折れバックしながらストールで3〜4秒降下。この間ブレークコードは引かれた状態でロックし翼はフルグライドになることはなかった。折れていた片翼が戻ったことによってスパイラルダイブに入り水田へ墜落。
 約4時間後収容された病院で死亡した。

2. 飛行の経過

 事故機の飛行経路の詳細は、搭乗していたパイロットが死亡しているため不明である。
 しかし、事故機の飛行経路は、同時間帯に飛行していた他のパイロットとほぼ同一の経路を飛行していたものと推定される。
 目撃証言から、事故機の飛行経過は次のように推定される。
 事故機は、2002年9月15日午後1時頃、レジャー飛行の目的で兵庫県朝来郡朝来町さのう高原に設置されたテイクオフ場(標高670m)を北西の風約1mの中を離陸した。
 離陸後、同機は西側に位置する尾根を回り込み風下側にあるランディング(標高187m)場方向(高度差483m)に飛行したと思われる。
 飛行経路上では所により弱いリフトがあるものの高度を獲得するほどではなく多少上下する程度の気流状態の中をランディング場を目指して飛行した。その後ランディング西側上空(約300m)で両翼端を折りしばらく(時間は不明)その状態でフライトしたのち両翼を戻す。直後(ほぼ同時)ゆっくりとした左回りのフラットスピンに入り約3回転した。この時点でパイロットとグライダーがツイスト(捻れ)し、グライダーは南方向、パイロットは北向きとなる。いったんスピンが停止したが、すぐに逆回転(右回り)のフラットスピンに移行して約3回転する。その後スピンは停止したが両翼が折れた状態になり後退しながらストールし3〜4秒降下した。
 この間グライダーのラインとライザー、ブレークコードはツイストによりブレークコードは引かれた状態のまま固定された状態であったため操作不能であった。このため翼の後縁の操舵面はフルグライド状態に戻らない状態となっていた。その後、片翼が潰れから回復したためスパイラルダイブに移行し急旋回降下をしつずけたままランディング付近の水田へ墜落した。
 事故者はスプリング射出式緊急パラシュートを装備していたが使用操作をしたかどうかは不明。

3 原 因

 事故調査をして得られた情報から、今回の事故は、パイロットがフォローの風の中で両翼端折りにて飛行(アクセルを使用していたかどうかは不明)したため迎角の増大を招き失速速度に近い状態になっていた。更に両翼端折りを回復させる際に左右のブレークコードを操作した可能性も考えられる。その操作により両翼端折りを回復したと同時に失速しフラットスピンに入ってしまった。この時パイロットとグライダーがツイスト(捻れ)し、ブレークコードは引かれた状態のまま固定され操作不能状態となりスパイラルダイブに移行し墜落したと判断される。
 失速に至る要因として低翼面荷重(オーバーセール)であったことも要因と考えられる。
 パイロット体重58kg、装備重量20kgとしても合計78kgであり、グライダーの最低飛行重量85kgより更に約7kg前後低かった。
 事故者は通常約5kgのバラストを搭載していたがこの日は風が穏やかであったためバラストを搭載せず飛行した。


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