第1回
JHF補助動力付パラグライディング日本選手権
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期 間/平成9年11月2日〜3日
主 催/社団法人日本ハンググライディング連盟主催
公 認/財団法人日本航空協会公認
会 場/栃木県塩谷郡塩谷町パラハングウォーク滑空場
 
 JHFが主催する第1回MPG日本選手権は好天に恵まれ、2日間で5タスクを消
化し、JHFの新たな部門に栄えある初代チャンピオンが誕生した。【別表順位表参
照】すでにご承知の通りこの秋MPGスポーツは2つの日本選手権が開催された。両
選手権ともJAAの公認を受け、参加選手も2つの大会にかなりダブって参加してい
るが、競技内容は全く異なった考えの中で競われた。
 JHFにおけるMPG競技は「上昇、移動、高度維持、補助動力カット後のグライ
ディング」を基本としており、フルパワーによるスラローム、ローパス等の高度な動
力フライトは競技内容に含まれていない。また、補助動力であるため、燃費競技のよ
うに動力ユニットの性能を競うような内容は除外されており、すべてのタスクがエン
ジンカット後のソアリングに重点が置かれている。今回参加した選手の全員【19名】
がMPGのエキスパートであったため、前半の動力フライトではほとんど差が開かず、
エンジンカット後の競技で勝敗の行方が決定している。
●タスク1:サーキットタイム&デュレーションセットタイム競技
 選手は3分間隔でスタートし、前半は所定のパイロンを周回するサーキットタイム
を競う。エアーゴール直後にエンジンをカットし、後半は指定時間【初日10分・2
日目15分】のソアリングでセットタイムを競う。この競技のポイントはどの高度で
エンジンをカットするかの駆け引きで争われる。翼端折り以外のスピード降下手段が
認められていないため、他の機体の高度を横目で見ながら、各選手500m〜800
mでエンジンをカットしソアリングを開始するが、計算違いを冒す選手が続出して順
位は大きくばらける結果となった。
●タスク2: 周回・移動スピード&ターゲット競技
 パイロンを周回する前半は、全選手一斉のエアースタート・エアーゴールのスピー
ドレースで、単純にゴール順位で得点を競う。ゴール後の後半は、指定されたライン
上でエンジンをカットして、LD場のターゲットにセフティーランデングをしてLD
精度を競う。前半のエアースタートは視覚的に豪快で、観客から喚声や拍手が湧いた。
しかし15Km前後の周回距離ではほとんど差がつかず、後半戦のための空中待機時
間の方がレースの飛行時間よりも長かった。エンジンカットラインはターゲットから
かなり遠く滑空時間が長いため、約半数の選手がターゲットを逃した。
●タスク3:ダーツ&L/D競技
 単純明快な競技でレースと云うよりゲームに近い。しかし「運」に左右されず、実
力がそのまま結果に現れる競技だ。選手は2つのグループに別れ空中待機し、くじ引
きで決められた順番で競技を開始する。指定されたライン上でエンジンをカットし、
LD場のターゲットにダーツを投げ込む。ここまでは所謂「爆弾落とし」というゲー
ムだが、そこからどこまで滑空距離を延ばせるかを競う複合競技である。高く進入す
るとダーツが的を外れ、低く進入するとダーツで高い得点が得られるが、その後の滑
空距離を望めない。やっている選手は真剣だが見ている観客には楽しい競技で、普及
のための”見せる競技”としては最適だった。
 以上3種類のタスクに高度的・時間的なアレンジを加え、2日間で5タスクも消化
できたのは、開催主管・JHF補助動力委員会スタッフと大会サポートTSSA、な
らびにパラハングウォークスタッフの周到な準備と努力の成果だ。また、タスクの難
易度に参加選手が理解を示してくれたことと、開催両日が無風に近い微風であったこ
となど天も見方して、安全で気分の好い大会を開催することができた。
 順位争いについては別表のベスト10を見れば分かる通り、誰がトップに来ても不
思議のない顔ぶれだが、初日トップに立ったのは実力通り千葉の萩原選手だった。2
日目に入って一本目のタスクを終了した時点では、東京の久保田選手が満を持してト
ップに躍り出たが、最終タスクで埼玉の村田選手が日頃の実力を発揮して首位を奪っ
た。村田選手は昨年のプレ選手権のチャンピオンだが、今年のPPG選手権では苦汁
を飲まされ、やる気満々の雪辱戦での見事な優勝であった。
 JHFが主催するMPG日本選手権は誰でも参加できるタスクを組み、全国のMP
Gフライヤーが集合するよりどころとして開催することに意義を求めている。パラや
ハングの日本選手権は世界戦を睨んだ競技内容を考慮しなければならないが、MPG
にはそれがない。従って軽難度のタスクを本数で競うため、中級者でも参加できる反
面、一発勝負の重タスクが無く「どんでん返し」のような逆転は望めない。それでも
今回のように最後まで勝敗の行方が分からなかったのは、参加選手の力量がハイレベ
ルで接近していたからにほかならない。
 JHF補助動力付パラグライディング日本選手権は、今後も初期の意思統一の元に
継続されていく。今回の成功と反省を次の大会に引き継ぐため、さらに努力を重ねて
いくつもりだ。すでに非公式ながら2つの県が来年の開催を希望してきているが、現
在、予算・規模とも検討中で、さらに大勢のMPGフライヤーが参加できる体制を準
備している。全国のMPGフライヤー各位には、来年こそ是非気軽に参加していただ
きたい。
     (社)日本ハンググライディング連盟補助動力委員会担当理事 星野 納
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