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「パラグライダーで飛行中に着水したらどうなるか」


 安全性委員会(JHSC)は、着水による事故を防止するため、以下の実験を行いました。他人事と片付けず、あなた自身の問題として報告をご覧ください。
またJHSCに、ご意見ご感想のある方はお問い合わせまで。

着水実験結果報告

実験日時: 1999年9月15日 11時〜15時
実験場所: プール
気象環境:
台風接近中のため10m/sec以上の強風
晴れ時々曇り
気温30度前後
参加者:
JHSC委員 矢ヶ崎 弘志、岡 良樹、泉 秀樹、下山 進、幸路 尚文
雑誌取材 西ヶ谷 一志、中野 信行
撮影 町田 宏、細田 亮三
協力 長島 弘、内田 浩之
JHF広報 松田 保子
使用ハーネス:
1993年頃製造のもの。プロテクターは2cm厚のスポンジ。
10cmのムースタイプ。
エアバッグタイプ。リアレスキュー。サイズS。実験時は空気を入れて膨らませる。
17cmのムースタイプ。フロントレスキュー。
  (以下、ハーネスの種類はABCDと表記)
使用パラグライダー: 1992年頃製造のもの。
実験方法:
1. フライト中における着水事故設定。フライトスーツ・ブーツ・フルフェイスヘルメットを着用。
2. 各々のハーネスにて、機体を装着せずに飛び込んだ時の観察。
3. 前項の実験での脱出方法の模索と傾向。
4. 各々のハーネスにて、機体を装着して飛び込んだ時の観察。
5. 前項の実験での脱出方法の模索と傾向。
6. 着水時に風がある場合の機体や緊急パラシュートからの脱出方法の模索と傾向。
実験結果:
1. リハーサル
  被験者及びカメラのテスト。Aハーネスを使用し、被験者は水着のまま飛び込む。
被験者の安全確保と学習のため。また、水面でロールできる(うつぶせや仰向けになれる)ことを確認。
2. 通常飛行状態の装備でAハーネスを装備しての着水実験
  プールサイドから飛び込み、足から着水するがすぐ前に倒れ、顔から体全体が水にはいる。
フライトスーツが体にまとわりつき、犬掻きの状態で呼吸を確保する。
エアロ型フルフェイスの後頭部の突起は、あまり気にならない。ラインがその状態から足に絡んでしまったら、ロールすることも呼吸確保も困難と思われる。
3. 通常飛行状態の装備でAハーネスを装備、機体をつけての危険回避の実験
  強風だったので機体を広げられず、ラインが束になった状態での着水だったため、ラインが後方に伸び、絡むことなく体をロールし、仰向けになることができた。
バックルをはずしハーネスを脱ごうとするがショルダーベルトがはずしにくい。
4. 通常飛行状態の装備でCハーネスを装着しての着水実験
  プールサイドから飛び込み、足から着水するがすぐ前に倒れ、顔から体全体が水にはいる。
完全に頭が沈み、足が水面の上に出る。犬掻きでも、顎を水面からあげることが難しい。
ロールし体を起こそうと試みるが、上体を起こすことが不可能。ハーネスから脱出する際、ショルダーベルトをはずし、バックルを取る。
この方法だと早く脱出できることがわかった。 脱出するときは必ずうつぶせになり、脱出を試みる前に十分に息を吸っておくことが必要。
5. 通常飛行状態の装備でCハーネスを装着、機体をつけての危険回避の実験
  3の実験と同様、ラインが足に絡むことはなかった。
また、4の実験と同じく上体を起こすことは不可能。脱出の際、呼吸を整え、うつ伏せで潜り、バックルからはずす。
ショルダーベルトがとれ難く、4の実験より脱出までの時間がかかる。
6. Cハーネス装着時のライフジャケット2種の有効性の実験
  〈エアバッグ式ライフジャケットを使用〉
  水面から15cm以上の高さに口が位置し、呼吸も楽にでき、パニックに陥り難い。
上体はうつ伏せだが、ライフジャケットが強制的に首を持ち上げるため、波があっても安心できる。
ただし、首から頭部にかけては固定され動かない。
  〈カヌー用ライフジャケットを使用〉
  泳いでいないと顔は水中に入る。脱出は、ショルダーベルトを取りバックルをはずす方法を採用。
ライフジャケットが動作を邪魔し、はずし難く感じた。
何も着けていないより、救命具等をつけているという安心感がある。
7. 通常飛行状態の装備でBハーネスを装着しての着水実験
  フライトスーツに空気が入り浮力が得られる場合は、仰向けになり安定する。
当然呼吸は十分にできる。うつぶせになりバックルをはずす。
やはりショルダーベルトははずし難い。この後、Tシャツ・Gパンで飛び込むが、仰向けで浮くことができず、今までの実験と同様にうつぶせになる。
8. 通常飛行状態の装備でBハーネスを装着、機体をつけての危険回避の実験
  7の実験と同様、仰向けで安定した。ハーネスから脱出する際は、うつ伏せに回転しショルダーベルトからはずす。
ショルダーベルトからはずすことによって、7の実験より早く楽に脱出できた。
9. 通常飛行状態の装備でDハーネスを装着しての着水実験
  プールサイドから飛び込み、足から着水するがすぐ前に倒れ、顔から体全体が水に入る。
体をロールさせ仰向きの態勢をとろうと試みるができない。
フロントレスキュータイプのため金具が多く、はずすのに手間取る。
ハーネス自体の浮力はエアバッグタイプ(Cハーネス)と同様に感じられた。
着水時は、水面に浮いた堅い浮き輪の上に落下したような感覚があった。脱出するためには冷静に対処する必要がある。
10. 通常飛行状態の装備でDハーネスを装着、機体をつけての危険回避の実験
  9の実験と同様、着水した直後にすぐ前に倒れ、確実に頭が下がるため、着水前にライザーを左右共に握り締め、着水後に前に倒れると同時に体を左右どちらかにひねり、頭上に来る側のライザーとラインを頭からかぶらないように、頭上後方に通過させる。ラインがまとわりつかないようにするのが最優先であり、これは実験したハーネスのすべてに言えた。
実験結果−
教本の着水マニュアルについて:
11. バックルをはずした状態での着水実験(Cハーネスを使用)
  これまでの実験と異なり、着水と同時にフライヤーの下半身はハーネスから放り出される形になる。
ハーネスが浮こうとする力に対して人間が沈もうとする力を肩ベルトで支えることになり、はがいじめ状態になって両腕の自由が奪われ、ショルダーベルトがはずれ難かった。
12. バックルをはずした状態での着水実験(Aハーネスを使用)
  11の実験と同様
13. バックルをはずした状態での着水実験(Bハーネスを使用)
  11の実験と同様
14. バックルをはずした状態での着水実験(Dハーネスを使用)
  11の実験と同様
15. Dハーネスで着水、ラインとキャノピーを被験者の上に投げ込む実験
  プールサイドから飛び込み、足から着水するがすぐ前に倒れ、顔から体全体が水にはいる。
体をロールさせることができないため、犬掻きの状態で呼吸を確保していると、頭上にキャノピー及びラインが投下された。
いったん足にラインが絡みつくと、もがく度にラインの絡みがひどくなり、どうすることもできない。
ハーネスから脱出することはできたが、足にはラインが絡みつき、泳ぐことができない。
ハーネスにしがみつくのが精一杯だった。
16. 風がある場合の緊急用パラシュート開傘を想定した着水実験(Cハーネスを使用)
  ロープをハーネスの緊急用パラシュートのブライダルコードにつなげ、プールサイドから引っ張り、緊急用パラシュートが風を受けてはらんでいる状態を再現した。
被験者は着水と同時に後方に引きずられるように水面を進む。
被験者は体を左右どちらかに傾け、顔を水面から上げて呼吸の確保を試みるが、充分とは言えず、それ以外のことは一切できなかった。
17. 16と同じ実験−2度目
  16の実験と同様、着水と同時に後方に引きずられるように水面を進むが、2度目なので被験者も余裕があり、呼吸できるタイミングをはかって息を深く吸い、水面に顔をつけた状態でバックルをすべてはずしたところで、動いていくハーネスから引き抜かれる形で(ハーネスをひきはがされるように)脱出できた。
この場合、11の実験と異なり、ショルダーベルトが引っ張られているので、簡単に離脱できた。
18. 風がある場合の緊急用パラシュート開傘を想定した着水実験(Cハーネスを使用しバックルをはずした状態で)
  17の実験でバックルをはずした後と同様に、ハーネスが引っ張られており、被験者は水の抵抗を受けており、非常に簡単に脱出できた。
考察: 大前提−とにかく落ち着いて行動すること。あわてず、ラインに絡まないように呼吸を確保する。
1. 着水後の安全な姿勢確保
  ハーネスには浮力があり、その浮力の大きさにより、水中でのフライヤーの姿勢が大きく影響を受ける。
  〈着水後のフライヤー姿勢〉
 
T. 着水時の水深が130cmの場合、フライヤーの身長が178cmあっても、ハーネスの持つ浮力のために、直立して水底に足場を確保することができない。
U. 5年ほど前のハーネスや薄型ムースタイプであれば、フライヤーの意思で仰向けの姿勢で浮くことが可能である。
厚型ムースタイプやエアバッグハーネスでは、仰向けの姿勢をとることは困難であり、うつ伏せや傾いた姿勢を水中で強要される。
うつ伏せや傾いた姿勢では、水面上に顔を出し(波や水流がある場合)長時間呼吸を確保するのが難しいことが予想される。
  〈ライフジャケットの効果〉
  ライフジャケットなしの場合、犬掻きの状態で顔を上げるのが精一杯で、流れや波のある水面での呼吸は難しいと考えられる。
 
T. 一般的なカヌー用ライフジャケットでも浮力効果はあり、上半身を持ち上げる力になっており、顔を水面上に無理なく出せるので呼吸の確保がしやすい。
口と水面との距離は5cm程度確保された。
U. エアバッグ式ライフジャケットは、頸部・頭部に大きな浮力で発生させるため、呼吸の確保がよりしやすい。
口と水面との距離は15cm程度確保された。
2. ハーネスからの脱出
  〈ハーネス形状の影響〉
 
T. 5年ほど前のハーネス(Aハーネス)は、浮力が少ない分、フライヤーの体からハーネスを引きはがす浮力が水中で働き難く、体にまとわりつきやすい。
ショルダーベルトをはずしてから、チェストベルトとレッグベルトをはずした方が脱出しやすい。
U. ムースタイプやエアバッグタイプは、ハーネス自体の浮力が大きく、その大半が水面上に出ているので、水深が1m程度以上ある時は、レッグベルトとチェストベルトの金具をはずしてから、フライヤー自身が水中に身を沈めるようにしてショルダーベルトから抜けると、脱出しやすい。
3. 着水前のベルトはずしの効果
 
T. チェストベルトとレッグベルトを空中で予めはずしておいた場合、着水と同時にハーネスに浮力が生じるため、ハーネスが腰からはずれ、その結果、体が水中に沈み後頭部にハーネスがかぶさり、前かがみになって顔が水面に押し付けられる。
ムースタイプやエアバッグタイプは、それ自体の強い浮力があるため、レッグベルトやチェストベルトをはずした状態では、着水後に連続した動作で体を沈めるようにして脱出することができる。
U. チェストベルトとレッグベルトを締めたまま着水した場合は、ハーネスが体に固定されているので、着水時の安定感はある。
水中で一度体を安定させ、呼吸を確保してから、落ち着いて脱出の動作に移行する。
この時、左右に大きくロール運動したり、手足を大きく動かして水を掻くと、ラインが絡みつく危険があるので注意する。
4. ラインの状態
  ラインは水面に広がって浮くことはなく(ダイニーマの皮覆なしのものは浮く)、着水と同時に水中に沈み始める。
また、ラインの太さより長さの影響が大きく、水中ではかなり強い抵抗が生じる。
水中で安定した姿勢を確保しようともがき、足や手にラインが絡むと、ラインの抵抗が絡んだ部分を締め付ける形となり、はずすのが困難になる。
5. ラインが絡んだ場合
  1本でもラインが体に絡んでいると、フライヤーの身動きはままならなくなる。
特に水中では簡単にはずせないので、ラインに絡むのを最も注意するよう心がける。
万一ラインが絡んだ場合は、あわてて暴れずに、ハーネスやキャノピーの浮力を利用して呼吸を確保し、手袋は捨てて、足に絡んだラインは靴を脱いでからはずすようにするとよい。
6. キャノピーや緊急用パラシュートが風をはらみ水中や水面をひきずられた時
  キャノピーや緊急用パラシュートが風をはらんだまま風に流されて、あるいは川や潮の流れでフライヤーを引きずると予想される時は、バックル類は空中で必ずはずしておくこと。
7. 水中での安定した呼吸確保
  ハーネスからの脱出後、近くにハーネスがある場合は、ハーネスを浮き袋のかわりにして救助を待つことも可能である。
5年ほど前のハーネスや、薄型ムースタイプでは、場合によってはキャノピーを切り離したまま仰向けに水面に浮いて救助を待つことも可能。
8. 水没後の機材状態
  キャノピーは大きなシーアンカーとなってフライヤーを引きずり込むことが予想される。
水を含んだキャノピーやハーネスはフライヤーの力では自由にならない。
ラインも水中に落ちた場合は沈み、水底の障害物に絡んで思わぬ二次アクシデントの要因となる。
水没したハーネスは水を含んでかなり重くなっているので、浅瀬でもあわてて立ち上がらず、転倒した姿勢でハーネスから脱出できるのであればその場で脱出し、体だけで身軽になって、救出を待つ。
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